「崩壊の時代の芸術体験 – Art Experience in the Age of Collapse」コース

Series 1. 危機と崩壊の時代にアートができること

What Art Does in Times of Collapse and Crisis

私たちは今、気候危機や感染症をはじめとする前例のない厳しい時代に生きていると言えるでしょう。Series 1では、「崩壊」の状況を理解するレクチャーと、哲学や美学、スピリチュアルの領域と関係する20世紀の4人のアーティストの考えや作品を紹介し、地球システムと意識の崩壊について学びます。これからの世界でよりよく生き、能動的に思考(センスメイキング)するための「知恵」を探ります。

 *本コースは、シリーズ1からの視聴をおすすめしますが、シリーズの順番に関わらず、興味・関心のあるテーマからお申し込みいただけます。

レクチャータイトル

①地球のシステムの限界と崩壊  
②自由の意識の崩壊:資本主義リアリズム 
③戦後のアート:デュビュッフェ、錬金術と泥の絵画 
④ピカソと「化物の時代」の絵画 
⑤ダンスを解体する、すべてのために踊る:アンナ・ハルプリン 
⑥アートの「ビジョナリー」モード:エマ・クンツのマンダラ

 

インストラクター:ロジャー・マクドナルド(TASプログラム・ディレクター / フェンバーガーハウス館長)
レクチャー数:6 [ 各20 - 30分 ]
使用言語:日本語

地球のシステムの限界と崩壊

ウィリアム・キャットンとウィリアム・リースの著作を基にした「オーバーシュート」という考え方を紹介します。私たちの大量消費型の生活は、天然資源を補充するよりも早く消費し、あふれんばかりの廃棄物と汚染をもたらしています。気候変動や生物種の絶滅は、この「オーバーシュート」の症状といえます。現在、多くの学者や科学者が、この生活をこのまま続けると破滅的な結果を招き、社会は崩壊すると警告しています。

自由の意識の崩壊:資本主義リアリズム

文化理論家の故マーク・フィッシャーは、2009年に『資本主義リアリズム』を著し、資本主義の亡霊に完全に飲み込まれた現在の姿を描きました。彼の理論の重要な要素は、今日の文化における意識の「デフレ」と呼ばれるものでした。フィッシャーは、階級意識、サイケデリック意識、意識改革の実践を、再び想像することができる強力な批判的遺産として紹介しました。

戦後のアート:デュビュッフェ、錬金術と泥の絵画

第二次世界大戦後の1946年、ジャン・デュビュッフェは「ミロボラス」と題した展覧会を開催しました。この展覧会は、「糞」や「泥」に例えられ、酷評されました。デュビュッフェは、泥という原始的な物質性に立ち返ることで、社会が完全に崩壊し荒廃した後の芸術制作とは何かを探りました。また、ジェームズ・エルキンスによる現代絵画の錬金術的研究も紹介されます。自然を通して、芸術はどのように再生し、私たちに影響を与えるのでしょうか。

ピカソと「化物の時代」の絵画

美術史家のTJクラークは、ピカソが第一次世界大戦の大惨事の後、怪物を描くようになったと論じています。芸術家はもう「真実」を描くことはできないのでしょうか。「安全な秩序」で描くことはもはや不可能なのか。1920年代半ばの作品を中心に、ピカソがどのように人間の極限の痛みや強さを表現したのかを探ります。

ダンスを解体する、すべてのために踊る:アンナ・ハルプリン

アンナ・ハルプリンは、ダンス表現を集団的なヒーリングとして開放した、先見性のあるダンサーであり先生です。ジョン・ケージと同様に、ハルプリンはダンスの焦点を振り付けから「スコアリング」へと移しました。そしてアクティヴストとして、1970年代半ばから個人的な癒しや地球の癒しの分野で活躍しました。また、講師の個人的な体験として、ハルプリンの最後の夏のエサレン・ワークショップに参加したことも紹介します。

アートの「ビジョナリー」モード:エマ・クンツのマンダラ

エマ・クンツのマンダラ・ドローイングは、カール・ユングが「芸術の幻視様式」と呼んだ、人間の最も深いところにある象徴や感情に根ざした深遠な表現です。クンツはスイスの有名なヒーラーで、ドローイングを治療の中心に据え、患者が洞察と解放を得られるよう手助けをしました。また、マンダラのスピリチュアルな役割についても紹介します。

料金プラン・お申し込み

レクチャー数:6
参考文献リスト付き

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インストラクター

ロジャー・マクドナルド

TASプログラム・ディレクター / フェンバーガーハウス館長

 

東京生まれ。幼少期からイギリスで教育を受ける。大学では国際政治学を専攻し、欧州平和大学(European University Center for Peace Studies)に留学。カンタベリー・ケント大学大学院(University of Kent)にて神秘宗教学(禅やサイケデリック文化研究)を専攻、博士課程では『アウトサイダー・アート』(1972年)の執筆者ロジャー・カーディナルに師事し近代美術史と神秘主義を学ぶ。1990年代後半、「神勝寺国際禅道場」(広島県)での禅修行やシャーマニズムの研究者テレンス・マッケナのワークショップ(ロンドン)に参加。1998年帰国後、インディペンデント・キュレーターとして活動。初めて手がけた企画は、山梨県清里にて、森の中に大きな穴を掘りアーティストたちの作品を埋めて、開催中に発掘する展覧会を開催。横浜トリエンナーレ2001」アシスタント・キュレーター、第一回「シンガポール・ビエンナーレ 2006」キュレーター、2017年にはアウトサイダーアートの大規模展「日本財団DIVERSITY IN THE ARTS 企画展ミュージアム・オブ・トゥギャザー」(スパイラルガーデン、東京)のキュレーションを担当するほか、2000年から2013年まで国内外の美術大学にて非常勤講師として教鞭をとる。2010年長野県佐久市に移住後、2014年に「フェンバーガーハウス」をオープン、館長を務める。2016年、観察実践集団「第3の鳥結社」の活動に参加、国際会議(アメリカ、ブラジル)に出席。2018年夏、カウンターカルチャーの聖地エサレン(Esalen、アメリカ西海岸)にてアーティストのアンナ・ハルプリンによるワークショップに参加。2018年から気候危機に関する研究を始める。2019年、望月地域にて市民運動グループ「MOACA」設立。気候危機や「適応」に関するレクチャーとディスカッションを開催。2021年UBIA「宇宙美術アカデミー」をスタート。ホールフードプラントベースの食事法を取り入れたカフェや量り売りショップ、スペースミュージッククラブほか「市民回復センター」を主催。AITでは、設立メンバーの一人として、現代アートの学校MADやTASのプログラムディレクションなどを担当。2022年に『DEEP LOOKING(ディープ・ルッキング)想像力を蘇らせる深い観察のガイド』を出版し、吉本ばなな氏、坂口恭平氏をはじめとする多くの表現者、読者、書店から大きな反響を得る。雑誌POPEYEによるPOPEYE Webでは2021年より「ラディカル・ローカリズム」を連載。美術手帖が運営するアートポータルサイトでは、気候危機とアートについての連載記事シリーズ「Art and Climate NOW」を掲載中。

サンプルレクチャー|Sample Lectures

サンプル Lecture 1「地球のシステムの限界と崩壊」(2:49秒)

 

サンプル Lecture 5「ダンスを解体する、すべてのために踊る:アンナ・ハルプリン」(2:46秒)